MobSFの脆弱性 CVE-2025-58161/58162:パス・トラバーサル/任意ファイル書き込みの恐れ

MobSF Vulnerability Allows Attackers to Upload Malicious Files

2025/09/02 gbhackers — Mobile Security Framework (MobSF) のバージョン 4.4.0 に深刻なセキュリティ欠陥が発見された。これらの脆弱性はパス・トラバーサルおよび任意ファイル書き込みに関連するものであり、認証済み攻撃者に悪用されると、システム整合性の侵害/機密データの漏洩などにつながる可能性がある。この問題は MobSF バージョン 4.4.1 で修正されており、具体的には、パス検証の強化やファイル抽出ルーチンの安全化が施されている。

これらの脆弱性 CVE-2025-58161/CVE-2025-58162 は、MobSF のファイル処理ルーチンにおけるパス検証の不備に起因する。いずれも、プラットフォームのパス・トラバーサル保護の弱点を露呈するものであり、認証済みユーザーに対して、指定ディレクトリ外のファイルへのアクセス/変更を許すものとなる。

CVE-2025-58161: ディレクトリ・トラバーサルの脆弱性

1つ目の脆弱性は、GET /download/<filename> エンドポイントにおけるパス・トラバーサルの欠陥である。

MobSF はパス検証に “os.path.commonprefix” を使用しているが、それは適切なパス構成要素の解析と言えるものではなく、文字列ベースの比較に過ぎない。そのため、ダウンロード要求の処理時に、ファイル・パスが誤って検証されてしまう。この問題が、認証済みユーザーに悪用されると、意図したダウンロード・ディレクトリと同じプレフィックスを持つ、隣接ディレクトリのファイルへのアクセスが可能になってしまう。

たとえば、正当なダウンロード・ディレクトリが “/home/mobsf/.MobSF/downloads” の場合に、攻撃者は “/home/mobsf/.MobSF/downloads_bak” や “/home/mobsf/.MobSF/downloads.old” へのアクセスを可能にする。この問題により、絶対パスを取り込んだ悪意のリクエストが成立するため、相対パスだけに依存する既存の保護は回避されてしまう。

CVE-2025-58162: 任意のファイル書き込みの脆弱性

2つ目の脆弱性は、iOS における静的解析時に、悪意の “.a” アーカイブを介した任意のファイル書き込みを許すものである。

MobSF は静的リンク・ライブラリを処理する際に、アーカイブ内のファイル名を適切に検証せずに、埋め込まれたオブジェクトをファイル・システムに抽出してしまう。そのため、攻撃者は、絶対パス名を持つメンバーを取り込んだ “.a” ファイルを作成し、抽出時にファイル名が “/” または “C:/” で始まる場合に、 “Path(dst) / filename” 処理により保存先ディレクトリの制限を回避できる。

この脆弱性を悪用する認証済みユーザーは、”db.sqlite3″ およびコンフィグ・ファイルの上書きや、Web テンプレート改竄によるクロスサイト・スクリプティング (XSS) を可能にする。

影響と評価
  • CVE-2025-58161 の影響は、兄弟ディレクトリへの限定的アクセスに留まり、CVSS スコア 0.0 (Low) と評価されている。
  • CVE-2025-58162 はシステム侵害に直結するため、CVSS スコア 6.0 (Moderate) と評価されている。

CVE-2025-58162 の悪用に成功すると、以下の影響が生じる恐れがある。

  • データベース破損によるシステム障害
  • 分析結果の改ざん
  • 蓄積型クロスサイト・スクリプティング
  • 不適切なコンテナ環境における権限昇格

どちらの脆弱性とも、MobSF プラットフォームへの認証済みアクセスを必要とするため、それらを悪用できるのは、有効な認証情報を持つユーザーに限定される。

この脆弱性は研究者 noname1337h1 (Solar AppSec の Vasily Leshchenko) により発見され、責任を持って開示された。すでに MobSF 開発チームは、バージョン 4.4.1 をリリースし、これらの脆弱性を修正している。具体的には、以下の対策が実施された。

  • パス比較を文字列ではなく適切なパス・コンポーネント解析に変更
  • アーカイブ抽出ルーチンで絶対パスを拒否
  • ファイル操作前の包括的パス正規化を追加
CVE IDVulnerability TypeSeverityCVSS ScoreAffected Versions
CVE-2025-58161Path TraversalLow0.0/104.4.0
CVE-2025-58162Arbitrary File Write (AR-Slip)Moderate6.0/104.4.0

この事例が浮き彫りにするのは、セキュリティ分析プラットフォームにおける堅牢な入力検証と安全なファイル処理の重要性である。直接的なリスクは、認証済みユーザーによる悪用に限られるが、システム侵害の可能性を考慮すると、エンタープライズ環境では迅速なアップデートが強く推奨される。