WordPress の分散型 Plugin Manager の発表：Linux Foundation が後押しする理由は何処に？

Linux Foundation unveils decentralized WordPress plugin manager

2025/06/09 BleepingComputer — WordPress の元開発者やコントリビューターで構成される団体が、Linux Foundation の支援を受けるかたちで、信頼性の高い WordPress プラグイン／テーマを提供する、新たな独立系ディストリビューション・システム FAIR Package Manager を発表した。その背景にあるのは、商用 WordPress ホスティング・プロバイダーである Automattic と WP Engine の間で発生した法的な対立である。具体的に言うと、プラグイン／テーマのアップデートを管理するために使用される、 WordPress.org プラットフォームへの WP Engine のアクセスを、Automattic が制限したことに端を発する問題である。

ただし、この紛争は単純なものではなく、ブランド使用に関する対立や、 WordPress オープンソース・プロジェクトへの貢献の在り方を巡る意見の相違など、複数の要因に起因している。

WordPress の共同創設者であり Automattic の CEO を務める Matt Mullenweg は、「WP Engine は WordPress に対して、十分な貢献をせず利益を得ている」と公に非難している。そして Mullenweg が、”WP Engine は WordPress の癌” と表現したことを受けて、WP Engine は Automattic に対し停止通告書を送付した。

さらに WP Engine は、Mullenweg が “焦土作戦” により脅迫し、商標ライセンス料として数百万ドルをゆすり取ろうとしたと非難した。その一方で、Automattic 側は独自の差止通告書を提出し、WP Engine が WordPress の名称を無断で使用し、WordPress および WooCommerce の商標を侵害して $400 million の収益を得ていると反論した。

オープンソースの WordPress プラグイン・マネージャー

こうした状況を背景に、Linux の開発や OSS プロジェクトを支援する非営利団体 Linux Foundation が、単一のソースに依存せずにプラグイン／テーマの配信／更新を担う、ベンダー中立の分散型配布システム FAIR Package Manager を発表した。

Linux Foundation の Executive Director である Jim Zemlin は、「FAIR Package Manager プロジェクトは、安定と成長に向けた OSS コンテンツ管理の方向性を示し、コントリビューターややユーザー企業に対して中立的なコミュニティにより管理される、新たな選択肢を提供するものだ」と述べている。

WordPress.org エコシステムに対する分散型代替手段となる、このプラットフォームは、集中管理されたサービスを統合インフラへと置き換えるドロップ・イン型のプラグインを通じて、WordPress 開発者やホスティング事業者に主導権を取り戻させることを目的としている。

この新しいプラットフォームでは、「あらゆるソースのプラグインを統合することで、断片化されたエコシステムを統合し、強化された暗号化／ブラウザ互換性チェック／信頼できるソースのセキュリティ・ソルト活用などを通じて、ソフトウェア・サプライチェーン全体にセキュリティを組み込む」と説明されている。

また、WordPress.org API を通じた通信を、ローカルまたは FAIR の代替手段に置き換え、FAIR プロトコルに対応するオプトイン形式のパッケージをサポートすることで、プラグイン／テーマの新たな配布モデルを導入する。それによりホスティング事業者は、 AspirePress や独自ドメインを利用して、自社のプラグイン／テーマのミラーを構築できるようになる。

FAIR 技術運営委員会の共同議長を務める Carrie Dils は、「FAIR Package Manager プロジェクトは、WordPress エコシステムに対し、より堅牢かつ自立したソフトウェア配信の基盤を提供する。配布を分散化することで、この OSS コンテンツ管理プラットフォームの、持続可能性を長期にわたって確保する」と述べている。

さらに Carrie Dils は、「WordPress 上で、プロダクト／サービス／重要インフラを構築している、すべての人にとって、FAIR Package Manager プロジェクトは、信頼性と安定性のある選択肢になるはずだ」とも強調している。

WordPress の将来に対する新たな選択肢を、FAIR Package Manager の発表が示しています。Linux Foundation が支援することで信頼性が高まり、プラグイン配布の分散化も期待できそうです。商標問題に端を発した対立は残念ですが、なんとか仲直りしてほしいですね。よろしければ、WordPress で検索も、ご利用ください。