Qtap – Linux システムの暗号化されたトラフィックを可視化:新たな OSS ツールの登場

Qtap – An Open-Source Tool to See Through Encrypted Traffic in Linux systems

2025/06/10 CyberSecurityNews — Qpoint が公表したのは、Linux システム上のネットワーク・トラフィックを監視する、オープンソース eBPF エージェントである Qtap のリリースだ。TLS/SSL 機能にフックして暗号化前後のデータをキャプチャする Qtap は、プロセス/コンテナ/ホスト/ユーザー/プロトコルといった詳細情報と共に、平文のトラフィックを可視化する。

Qtap は帯域外で動作するため、オーバーヘッドが少なく、遅延やアプリケーションの挙動に影響を与えない設計となっている。特に、複雑なアプリケーション/サードパーティ・サービス/レガシー・システムなどにおいて、ネットワーク上で発生する挙動を、簡潔に把握できる仕様となっている。軽量かつ安全であり、煩雑な設定を必要としない点も特徴である。

Qtap の機能

Qtap は、開発者/セキュリティ専門家/システム管理者のためのツールだが、アプリケーションの改変/プロキシの導入/証明書の管理などを必要とせずに、アウトバウンド・トラフィックに対する深い洞察を提供してくれる。したがって、機密データの監査/ネットワーク障害のデバッグ/レガシー・システムの調査などの各種シナリオにおいて、ネットワーク上で何が起きているのかを明確に可視化できる。

主な機能とユースケース

可観測性パイプラインや Qpoint のようなカスタム・ソリューションの基盤となるコンポーネントとして、Qtap の汎用性は最適なものとなる。主な使用例は、以下の通りである。

  • セキュリティ監査:ネットワーク通信において機密データが漏洩していないことを確認する。
  • ネットワーク・デバッグ:リアルタイムのトラフィックから得られる洞察により、API エラー/パラメータ設定の誤り/予期しない応答の原因などを診断する。
  • API 開発:正しくフォーマットされたリクエストを、アプリケーションが送信し、期待通りの応答を処理していることを検証する。
  • サードパーティ統合:外部サービスとのデータ交換が、ドキュメントに記載された仕様と一致していることを確認する。
  • 学習と探索:ライブ・トラフィックを観察することで、プロトコルの動作を研究/理解する。
  • レガシー・システム:ソースコードへのアクセスが必要とせずに、ドキュメントが不十分なシステムであっても洞察が得られる。
  • 検証テスト:アプリケーションの変更が、ネットワーク通信パターンに悪影響を与えていないことを確認する。
Qtap の使用方法

まずは、デモ・モードで Qtap を試し、ターミナル上でトラフィックを確認する:bash:

$ curl -s https://get.qpoint.io/demo | sudo sh

インストールと実行:bash:

# Install Qtap
$ curl -s https://get.qpoint.io/install | sudo sh

# Run with defaults
$ sudo qtap

Qtap を利用する際には、BTF および eBPF が有効化された、Linux カーネル 5.10 以降が必要となる。対応の可否については、”/sys/kernel/btf/vmlinux” にて確認できる。また、実行にはホスト上での sudo 権限、あるいは、Docker 環境における CAP_BPF 権限および特権モードの有効化が必要となる。

Qtap の開発

Qtap は GitHub に公開されており、以下の環境/ツールを用いることで開発にも参加できる。

  • OS:Linux (カーネル 5.10 以降)/MacOS ユーザーは Lima を利用した Linux VM を使用可能。
  • 開発ツール:Go 1.24 以降/make/clang 14 (必須)/clang-tidy (任意)。

クローンとビルド手順:bash

$ git clone https://github.com/qpoint-io/qtap.git
$ make build
主な make コマンド
  • build:eBPF バイナリおよび Go アプリケーションをビルドする
  • generate:eBPF バイナリを生成する
  • run:デバッグ用インスタンスを起動する
  • ci:CI チェックを実行する

現在の Qtap は、初期の開発段階にある。そのため、API 仕様は変更される可能性があり、ドキュメントも不完全な場合がある。フィードバックについては、 GitHub の Issues または Discussions への投稿が推奨されている。なお、コントリビュータは、OSS および商用利用に関する、コントリビュータ・ライセンス契約に同意するものとみなされる。