暗号アルゴリズムの数学的欠陥を Claude Mythos が発見:セキュリティ研究の転換点に

Claude Mythos Preview Discovers Cryptographic Weaknesses That Human Experts Missed for Years

2026/07/29 CyberSecurityNews — Claude Mythos Preview を活用する Anthropic の研究者たちが、人間の専門家が長年にわたり見落としてきた、主要な暗号アルゴリズムにおける数学的欠陥を明らかにした。この AI が発見した手法は、ポスト量子デジタル署名方式である HAWK および、世界で最も広く使用されている対称暗号である AES のラウンド数を削減したバージョンに対して、効果的な攻撃を可能にするものだ。いずれの結果も、現時点の運用システムに脅威を与えるものではないが、デジタル・セキュリティの基盤に対するストレス・テストにおいて、人工知能が新たな方式を提示するという点で、大きな転換点を示している。

この種の暗号アルゴリズムを用いるデジタル署名方式は、Web サイトの真正性を検証し、対称暗号は秘密鍵を共有する当事者間のデータの機密性を確保するものである。具体的には、オンライン・バンキングから暗号化された Web トラフィックに至るまでの、あらゆるものを保護している。したがって、これらのシステムに欠陥が存在する場合には、数十億人のユーザーが危険にさらされることになる。

これまでの Claude Mythos Preview は、実際の運用で暗号化を弱体化させる、暗号ライブラリの実装上のバグを発見してきたが、今回の研究により示されたのは、このモデルがアルゴリズム自体の弱点も特定できる点だ。

Mythos Preview が暗号上の弱点を発見

最初の画期的な成果は、NIST のポスト量子暗号コンペティションにおける第 3 ラウンド候補である HAWK を標的としたものである。この取り組みを NIST が開始したのは、将来の量子コンピュータにより解読され得る、RSA や ECDSA などの方式に代わる暗号方式の候補を選定するためである。

HAWK は、専門家による 2 年間にわたる審査を通過している。しかし Anthropic は Mythos と API コスト約 10 万ドルを費やし、約 60 時間に及ぶ半自律的なテストにおいて、これまでの最適解とされる鍵回復攻撃を改良し、この方式の鍵強度を事実上半分に削減した。

この攻撃は、HAWK のラティス構造に存在する、これまで利用されていなかった対称性、すなわち非自明な自己同型写像を悪用している。これまでの理論では、このような対称性が、攻撃の高速化につながる可能性が示唆されていたが、この弱点が HAWK の設計に存在することを実証した者はいなかった。

その結果として、提案されている鍵長では、想定されていた安全性を十分に確保できないことが示された。たとえば、HAWK-256 を破るために必要とされる演算回数は、2^64 回から 2^38 回へ減少した。鍵長を 2 倍にすることでセキュリティは回復するが、コンパクトなポスト量子暗号オプションとしての HAWK の魅力の多くは失われる。

この攻撃は、依然として指数的な時間を要するものであり、より大きな鍵に対して、実用的な時間内で成果を上げることはできず、他の NIST 候補アルゴリズムやラティス暗号全般に影響を与えることもない。Anthropic は、この発見を HAWK の著者たちと共有し、NIST を通じて協調的な開示を実施した。

2 つ目の成果は、7 ラウンド AES-128 の暗号解読手法の改善に関するものであるが、完全な AES-128 は 10 ラウンド使用しているため、引き続き安全である。研究者たちは、この攻撃手法を検証するために、ラウンド数を削減したバージョンをテストしている。

Mythos が提示したのは、ミート・イン・ザ・ミドル (MITM:meet-in-the-middle methods) 手法を基盤とする、Möbius Bridge と呼ばれるフィンガープリンティング技術である。この手法により、従来は 256 個の値を確認する必要があった推測ステップの 1 つが排除され、評価方法によっては、従来の最速手法に対して 200 倍 〜 800 倍の高速攻撃が可能となった。

この発見は、数日間にわたる人間によるわずかな支援の後に、ほぼ完全に自律的に達成されたが、その後に研究者たちは、主張を検証するために数百時間を費やした。

Anthropic は、ラウンド数を削減した LEA や Serpent に対しても有望な初期結果を確認し、Salsa20/Poseidon/SHA-1 に対しても小規模な改善を確認している。この分野の進展を追跡しやすくするために、同社は ETH Zurich/Tel Aviv University/University of Haifa と協力し、暗号解析における言語モデル評価用の新しいベンチマークである CryptanalysisBench を開発した。

これらの発見は、導入済みソフトウェアの変更を求めるものではない。HAWK は候補方式にすぎず、AES への攻撃も完全な暗号方式を破るものではない。しかし、これらの結果は、実際のユーザーを保護する方式が確立される前に、最先端の AI が弱点を発見するものであり、暗号学が常に依存してきた敵対的レビューを加速できることを示している。

モデルの能力が向上するにつれて、人間の専門家は AI が生成した研究結果の検証に対して、より重点を置くようになる可能性がある。Anthropic が計画しているのは、より広範な監査の開始と、セキュリティ研究における言語モデルの役割に関する学術ワークショップの開催である。責任を持って運用されるなら、すべての人々のためにインターネットを保護するアルゴリズムが、このようなツールにより強化される可能性がある。