Monthly PickUp:2026-05

2026年5月:Linux カーネル関連の名前つき LPE 脆弱性が相次いで公表

脆弱性名NVD
Publish Date
攻撃対象サブシステム攻撃種別CVSSPoC野外悪用緩和策(暫定)
Copy Fail
CVE-2026-31431
26/04/22algif_aead
(AF_ALG 暗号 API)
LPE7.8あり確認済※ 26/05/01 CISA KEV 登録済
algif_aead モジュール無効化
Dirty Frag
CVE-2026-43284
CVE-2026-43500
26/05/08
26/05/11
esp4 / esp6(IPsec)
rxrpc(RxRPC / AFS)
LPE8.8
7.8
あり確認済esp4 / esp6 / rxrpc 無効化
Fragnesia
CVE-2026-46300
26/05/23XFRM ESP-in-TCP
(IPsec サブシステム)
LPEあり未確認esp4 / esp6 / rxrpc 無効化
(Dirty Frag と同じ緩和策)
DirtyDecrypt
/ DirtyCBC
CVE-2026-31635
26/04/24RXGK
(RxRPC 認証機構)
LPE7.5あり未確認CONFIG_RXGK 無効化
影響:Fedora / Arch / openSUSE のみ
ssh-keysign-pwn
CVE-2026-46333
26/05/15__ptrace_may_access()
(ptrace アクセス制御)
LPE +
情報漏洩
7.1あり未確認各ディストリビューション
アドバイザリに従う

共通点

  • 典型的なメモリ安全性の問題ではなく、Linuxカーネルの基本的な動作ロジックに関わるローカル権限昇格
    • 低権限ユーザーから root 権限取得につながる可能性
    • リモートから直接侵入する脆弱性ではないが、侵害後の権限昇格として非常に危険
    • コンテナ、共有サーバ、開発環境など、低権限ユーザーが存在する環境では影響が大きくなる可能性
  • 全件 PoC 公開済
    • いくつかは実際の攻撃での悪用も確認されている
    • Copy Fail は CISA KEV カタログに登録済
関連記事

動向のまとめ

  • Copy Fail により Linux カーネルの概念的な欠陥が露わになり、Dirty Frag の発見につながった
    • 最初の一件が「ページキャッシュへの不正書き込みはこのアーキテクチャで可能だ」と示してしまったため、世界中の研究者が「他に同じ仕組みを持つサブシステムはないか?」と一斉に掘り始めた
  • Copy Failで注目された攻撃クラスが、Dirty Frag / Fragnesia / DirtyDecrypt へと横展開
    • Dirty Frag は esp4/esp6、Fragnesia は XFRM ESP-in-TCP、DirtyDecrypt は RXGK と、攻撃する「入口」だけが違う同族の脆弱性
    • 単一CVEの対応ではなく、Linuxカーネルの複数サブシステムにまたがる同系統リスクとして見る必要がある

It’s raining Linux vulnerabilities: what’s going on? – techzine

AI による脆弱性検出の影響
  • Fragnesia は AI セキュリティ企業 Zellic の AIエージェント型ソフトウェア監査ツールV12 によって発見された – Ziff Davis
    • Zellic V12:AIやLLMと従来型の静的解析を組み合わせ、重大な脆弱性を見つけることを目的とした監査ツール
  • Anthropic の研究科学者 Nicholas Carlini が、Claude Code を使って Linux カーネルの複数のリモート悪用可能な脆弱性を発見したと報告。うち1件は23年間発見されていなかったもの。- InfoQ
    • 非常にシンプルな発見手法:カーネルのソースツリー全ファイルをループしながら Claude Code に「CTF に参加している。脆弱性を見つけろ」と指示する bash スクリプト
    • これまでに 5件の Linux カーネル脆弱性を確認しており、さらに数百件のクラッシュ候補があるが、人間による検証はまだ追いついていない。
  • Linux の生みの親である Linus Torvalds は、AI生成のバグ報告が急増し、Linuxカーネルの非公開セキュリティ用メーリングリストがほぼ管理不能になっていると警告 – betanews
    • 問題は複数の人が同じAIツールで同じカーネルコードを調べ、同じバグを見つけ、それぞれが非公開のセキュリティ窓口に報告していること。非公開リストでは他者の報告が見えないため、重複報告が大量に発生し、メンテナーの負担が増えている
    • Linux 7.1 でセキュリティバグ報告の新しいガイドラインが追加された
      • 非公開セキュリティリストに送るべきバグを、実運用環境で攻撃者に本来ない権限を与え、
        かつ大規模に悪用しやすいものに限定
      • AIで見つけた問題は、明確に重大な条件を満たさない限り
        公開メーリングリストやバグトラッカーに出すべき
    • 正式な報告には、最近のカーネルでの検証/再現手順/実証された影響/
      可能ならテスト済みパッチが求められる
  • GitHubでも同様に、バグ報奨金制度を厳格化 – GitHub

関連記事


Claude Mythos Preview で 1万件以上のゼロデイ脆弱性が Project Glasswing で明らかに

Anthropic’s Claude Mythos Preview Uncovers 10,000+ 0-Days in Project Glasswing

要点

  • Anthropic の未公開AIモデル Claude Mythos Preview が、Project Glasswing において 1万件以上のクリティカルなゼロデイ脆弱性を発見
    • Mythos Preview は、初月だけで 1万件以上の高深刻度・クリティカルなゼロデイ脆弱性を自律的に発見したとされる
    • Microsoft、Apple、Google、Cloudflare など50 以上の組織が参加し、Cloudflare では 2,000 件のバグ、うち 400 件が Critical / High
特徴
  • 特徴的なのは、Mythos が単に脆弱性を見つけるだけでなく、実際に機能するエクスプロイトを自律的に構築できる点
  • wolfSSL の脆弱性 CVE-2026-5194 では、証明書偽造につながる攻撃の可能性が示された
課題
  • 最大の課題は 発見速度に人間側の対応が追いつかないこととされ、初期スキャンでは 23,019 件の候補が見つかり、外部レビューされた1,900 件のうち 1,726 件が有効と確認
  • 報告済み1,596 件のうち
    • 実際に修正されたのは 97 件
    • 公開アドバイザリは 88 件
  • 従来の90 日間の協調的開示モデルでは、AI時代の大量発見・高速悪用リスクに対応しきれない可能性あり
  • 組織には、パッチ適用だけでなく、MFA、厳格な設定、振る舞い検知、MTTD短縮など、防御運用全体の強化が求められる

まとめ

  • AIがゼロデイを大量発見し、エクスプロイト生成まで行える段階に入った一方、修正・トリアージ体制が追いついていないという点がある。
  • 防御側にとって有用な技術である反面、攻撃者にも転用され得るため、脆弱性管理のスピード向上が急務。