WinRAR のゼロデイ CVE-2025-8088:エクスプロイト販売とフィッシングを介したマルウェア展開

CVE-2025-8088 – WinRAR 0-Day Path Traversal Vulnerability Exploited to Execute Malware

2025/08/15 CyberSecurityNews — WinRAR のゼロデイ脆弱性により浮き彫りになったのは、無防備なユーザーのシステムにマルウェアが侵入し得るという、人気ソフトウェアに対する継続的な脅威の存在である。このパス・トラバーサルの脆弱性 CVE-2025-8088 は、広く使用されているファイル・アーカイブ・ツールの Windows 版に影響を及ぼすものであり、細工したアーカイブを介して、攻撃者に任意のコード実行を許すものである。この脆弱性は、2025年7月中旬に発見されたものであるが、巧妙なフィッシング攻撃が蔓延する時代において、パッチ適用の遅延がもたらすリスクを示すものでもある。

この問題は、アーカイブの解凍時に、ファイル・パスが適切に処理されないことに起因し、Windows の Startup フォルダなどの許可されていない場所への、悪意のアーカイブ・ ファイル配置の可能性を引き起こす。代替データストリーム (ADS:alternate data streams) を悪用する攻撃者は、無害に見える RAR ファイル内に有害なペイロードを隠蔽し、解凍時におけるサイレント展開を可能にする。

この悪意の手法により、ユーザーが指定した正規のパスがバイパスされ、次回のログイン時に、リモートコード実行が引き起こされるという。Unix 版の RAR および関連ツールは影響を受けないが、Windows 版 バージョン WinRAR 7.13 未満を使用しているユーザーは、高いリスクに直面している。

この脆弱性の悪用には、少なくとも2つの脅威グループが関与している。1つ目は、ロシアと連携する RomCom (別名 Storm-0978) であり、2025年7月18日〜21 日にかけて、ヨーロッパとカナダの金融/製造/防衛/物流などの業界を標的とする攻撃を開始している。このグループは求職者を装い、偽装した履歴書に悪意のある RAR ファイルを添付するフィッシング・メールを配布し、SnipBot/RustyClaw/Mythic エージェントなどのバックドアを仕掛け、永続化とデータ窃取を狙っている。最近の RomCom は、脆弱性 CVE-2023-36884/CVE-2024-49039 の悪用を継続していたが、今回の脆弱性により3件目のゼロデイ・エクスプロイトとなる。

その一方で、2つ目の Paper Werewolf グループ (別名 GOFFEE) は、研究機関からの公式通信を模倣し、ロシアの組織に対して、この脆弱性を悪用している。これまでに検出された証拠によると、このエクスプロイトは、2025年6月下旬にダークウェブ・フォーラムで 、$80,000 で販売されていた可能性があるという。それが、複数の攻撃者へと急速に普及した理由であると、研究者たちは説明している。

WinRAR ゼロデイ・パストラバーサル・エクスプロイト

RAR アーカイブ内の疑わしい DLL を解析していた、ESET の研究者たちが、2025年7月18日の時点で、このゼロデイ脆弱性を発見した。その後の 7月24日に、研究者たちは WinRAR の開発者に通知し、2025年7月30日にはバージョン 7.13 がリリースされ、この問題は迅速に修正された。このパッチでは、パス・トラバーサルのメカニズムが修正され、不正な抽出パスが防止されている。

WinRAR には自動更新機能がないため、”Help” > “About WinRAR” でバージョン情報を確認し、公式サイトからソースをダウンロードする必要がある。すべてのユーザーに対して、強く推奨されるのは、速やかなアップデートである。さらに、%TEMP% ディレクトリや Startup ディレクトリをスキャンし、予期しないファイルの存在を確認する必要がある。また、メール・フィルタリングを強化して、RAR 添付ファイルをブロックする必要もあるだろう。

このインシデントで浮き彫りになったのは、ビジネス・コミュニケーションにおける圧縮ファイルの危険性である。この脆弱性の影響度は高いとされ、CVSS スコア は 8.8 と評価されている。

なお、オンラインで拡散しているデモ動画で、この脆弱性の仕組みが説明されているが、専門家たちは未検証の情報源に注意を促している。

2025年8月15日の時点において、標的型フィッシング以外の、大規模な攻撃は報告されていない。ただし、この脆弱性の公開により、模倣キャンペーンが活発化する可能性がある。