AI 駆動侵害の破壊力:LLM エージェントと Marimo の RCE を組み合わせた攻撃の実態とは?

Hackers Pivot from marimo RCE to Internal Database Using LLM Agent

2026/05/28 gbhackers — これまでの静的なプレイブックを廃した攻撃者が、リアルタイムで適応する AI 駆動エージェントへと移行していることを、新たに観測された侵入事例が示している。この攻撃は、Marimo ノートブック環境のリモートコード実行の脆弱性 CVE-2026-39987 を悪用するものであり、2026年5月10日に開始された。


侵入後の攻撃者は、環境ファイルとシステムパスからクラウド認証情報を収集した。従来のスクリプトベースの攻撃とは異なり、LLM エージェントにより動的に生成される侵害後のアクティビティが、その出力を分析することで、次のアクションをリアルタイムで決定していった。

この侵害から数分以内に、AWS API に対して窃取された認証情報が悪用された。攻撃者は AWS Secrets Manager から SSH 秘密鍵を取得し、それを用いて下流の SSH 踏み台ホストに対して認証を実施した。このピボットにより、内部インフラへのアクセスが可能となり、最終的に PostgreSQL データベースからのデータ流出に至った。

特筆すべき点として、データベース・スキーマと全データが 2 分未満でダンプされた点が挙げられるが、その速度だけではなく、精度の高さも示されている。

検出回避のための主要な技術として、Cloudflare Workers が分散型の外部送信レイヤーとして悪用されていた。この攻撃者は、単一のソースから API リクエストを送信するのではなく、11 個の異なる IP アドレスに分散させ、22 秒間で 12 件の AWS API コールを実行した。

Sysdig Threat Research Team (TRT) の報告によると、初期侵入からデータベース流出までの一連の攻撃チェーンは、LLM エージェントにより1 時間未満で実行された。今回のインシデントは、エージェント主導のポスト・エクスプロイトの、実環境における最初の事例の一つである。

このアプローチは、従来の送信元 IP 相関の分析を無効化するものであり、レート制限や IP ベースの異常検知に依存する防御を著しく困難にする。

同様のパターンは、SSH アクティビティでも確認されている。複数の短命セッションが、異なる IP から並列実行されたが、そこでは同一の窃取鍵が使用されていた。この分散実行モデルは、正常なクラウド動作を模倣しながら、協調的な悪性アクティビティを隠蔽する。

Marimo RCE からのピボット

Sysdig の研究者たちが特定したのは、この攻撃における 4 つの明確な指標である。それにより、事前に定義されたスクリプトではなく、AI エージェントにより動的に実行された状況が示される。

TimeEvent
2026-05-10, 18:23:44First WebSocket connection from 157.66.54.26 to /terminal/ws on a vulnerable marimo instance
2026-05-10, 18:23:45First interactive command (id) on the compromised host
2026-05-10, 18:24:14Attacker begins credential harvest against /app/.env*, /etc/environment, /proc//environ, ~/.aws/credentials
2026-05-10, 19:26:31First AWS API call (sts:GetCallerIdentity) using the first harvested access key, 48 minutes after the marimo session ended
2026-05-10, 19:26:52First secretsmanager:GetSecretValue call against an SSH-key secret
2026-05-10, 19:30:30First SSH authentication on SSH bastion server using the retrieved key
2026-05-10, 19:30:30 to 19:32:23Eight bastion SSH sessions executed in parallel from six distinct Cloudflare Workers IPs, dumping host configuration and the internal PostgreSQL database

指標_1:データベース標的化が即興的であった。アプリケーション・スキーマに関する一般的な仮定に基づき、攻撃者はテーブルを探索/ダンプしており、事前知識に依存しない推論的な挙動を示している。

指標_2:コマンドストリーム内に、一時的ではあるが、中国語の計画コメント “他にできることを確認する” が出現した。この内部モノローグと複数 IP からの同時実行は、人間による操作ではなく、自動化されたオーケストレーションを示唆する。

指標_3:機械処理向けにコマンドが構造化されていた。出力の区切り/結果の切り詰め/エラー抑制が示すのは、別システムである LLM が、結果を解析して次のアクションへ反映している可能性である。

指標_4:攻撃チェーンが、自身の出力を再利用している。たとえば、.pgpass ファイルから抽出した認証情報が、データベース・クエリにおいて即座に使用され、AWS シークレット識別子も API 応答から動的に選択されている。

侵入後の攻撃者は、きわめて迅速に行動した。初期アクセスは、Marimo ターミナルへの WebSocket 接続から発生し、その数秒後に認証情報の収集が開始された。

エージェント・システムへのデータ転送と推定される短い間隔の後に、AWS API コールが開始された。その数分後には、シークレット取得/踏み台ホストアクセス/データベース流出が完了していた。

このインシデントが示すのは、攻撃者の経済と能力の変化である。従来のような専用スクリプトを構築する必要はなく、AI エージェントを展開することで、ターゲット環境にリアルタイムで適応している。これにより攻撃コストは低減し、成功率は向上する。

その一方で、既知のコマンドシーケンスや IoC に依存する従来型の検知は、侵入ごとに異なる挙動を生成するエージェント型攻撃に対して、有効性が低下する可能性がある。

防御側にとって必要なことは、認証情報アクセス/不審なデータフロー/特権昇格パターンといった、なんらかの意図を持つ対象への検知へと重点を移すことである。

Sysdig の Michael Clark が指摘する通り、攻撃者は AI によりツールを進化させている。その結果、より高速で柔軟な侵入が実現され、検知が困難になっている。それは、既存のセキュリティ・モデルに対する挑戦でもある。