Microsoft の AppLocker に脆弱性:コンフィグ欠陥を突くセキュリティ制限の回避

Microsoft’s AppLocker Flaw Allows Malicious Apps to Run and Bypass Restrictions

2025/07/21 CyberSecurityNews — Microsoft の AppLocker ブロックリスト・ポリシーに発見された、コンフィグ上の深刻な脆弱性を悪用する攻撃者は、微細なバージョン管理エラーを突くことで、セキュリティ制限を回避する可能性を得るという。この問題は、MaximumFileVersion 値の誤りに起因しており、Microsoft のアプリケーション制御フレームワークに、悪用が可能な隙間を生じさせている。この事象が浮き彫りにするのは、エンタープライズ環境におけるセキュリティ・ポリシーの、厳密な実装の重要性である。

主なポイント
  1. MaximumFileVersion の誤値 (65355 および 65535) が、AppLocker のバイパスを可能にする。
  2. 改竄されたバイナリは有効な署名を喪失するため、署名要件付きのポリシーによる攻撃の阻止は可能である。
  3. ブロック・リストの値を更新し、すべてのコピーされたセキュリティ・コンフィグの監査による修正が可能である。
AppLocker コンフィグの脆弱性

Microsoft が推奨する AppLocker コンフィグに存在する些細であり重大な不整合に、この脆弱性が起因すると、Varonis Threat Labs は報告している。

研究者たちが特定したのは、本来の MaximumFileVersion フィールドが “65535.65535.65535.65535” であるべきところ、誤って “65355.65355.65355.65355” に設定されているという事実である。

このエラーから生じるバージョン・レンジ・ギャップを悪用する攻撃者は、アプリケーション制限の回避を可能にする。この問題のあるコンフィグは、以下のように Microsoft のブロック・リストに表示される。

“65535” は符号なしの 16-Bit 整数の最大値を表す。そのため、バージョン番号が “65355.65355.65355.65355” から “65535.65535.65535.65535” の範囲に設定される実行ファイルは、理論的にポリシーの適用をすり抜ける可能性を持つ。

したがって攻撃者は、ブロック対象となる実行ファイルのバージョン・メタデータを改変し、設定された最大値を超えるようにすることで、ブロック・リストに掲載されていても実行可能な状態にできる。

多層セキュリティによる軽減

この発見は懸念すべきものであるが、Microsoft の多層セキュリティ戦略により、実際のセキュリティへの影響は大幅に緩和される。

AppLocker のブロック・リスト・ポリシーは、署名済み実行ファイルだけの実行を許可するコード署名要件と、連携して機能するよう設計されている。

したがって、攻撃者が実行ファイルのバージョン情報を変更した場合には、ファイルのデジタル署名は破損し、その結果として、変更後のファイルは “signed executables only” ルールによりブロックされる。

この多層セキュリティ設計が示すのは、たとえ単一の制御メカニズムに欠陥が存在していても、それを補完するセキュリティ対策により、実質的に悪用の防止が可能であることだ。

しかし、コード署名ポリシーを実装せず、ブロック・リストのみに依存している組織は、このバイパス手法に対して脆弱となる可能性がある。

Microsoft によるドキュメント修正

このエラーの原因について調査した結果、Microsoft のドキュメントに誤りがあることが判明した。Microsoft の公開ページのドキュメントに、誤値 “65355” が記載されていたが、Varonis による責任ある情報開示を受けて修正が行われた。

このインシデントにより明らかにされたのは、管理者が十分な検証を行わずにコンフィグをコピーすることで、ドキュメントの誤りが本番環境のセキュリティ・ポリシーに波及する恐れがあることだ。

したがって、セキュリティ専門家たちが認識すべきは、すべてのポリシー設定を慎重に確認し、セキュリティ・ルールの盲目的なコピー&ペーストを避け、多層防御戦略を採用することの重要性となる。

AppLocker を使用している組織にとって必要なことは、MaximumFileVersion の設定値を適切なものに更新することであり、また、潜在的なバイパスを防止するために、包括的なアプリケーション制御ポリシーを確実に導入することである。