ミスコンフィグと脆弱性の決定的な違い:ログに記録されないリスクと対峙する方法とは?

Misconfigurations Are Not Vulnerabilities: The Costly Confusion Behind Security Risks

2025/08/06 TheHackerNews — SaaS セキュリティに関する議論では、よく “ミスコンフィグ” と “脆弱性” が混同される。しかし、それらは同じではない。そして、この違いを誤解すると、深刻なリスクを招きこむことになる。この混乱は、単なる言葉の意味の問題ではない。特に、共有責任モデルに対する、根深い誤解を反映しやすい SaaS 環境においては、ベンダーとユーザーの責任の境界が曖昧になりがちである。

脆弱性とは? ミスコンフィグとは?

脆弱性とは、SaaS プラットフォーム自体の、コード・ベースに存在する欠陥である。それらの問題を修正できるのはベンダーのみとなる。ゼロデイ攻撃やコード・レベルのエクスプロイトを想像すると、解りやすいかもしれない。

その一方で、ミスコンフィグはユーザー制御に関連するものだ。つまり、プラットフォームの設定方法の問題であり、アクセス権の付与や、連携や接続の選択、そして、適用するポリシーなどにより発生するものである。ミスコンフィグの例としては、過剰なアクセス権を持つサードパーティ製アプリや、機密性の高い社内サイトの意図しない公開などのケースなどが挙げられる。

共有モデルだが責任は分散する

ほとんどの SaaS プロバイダは、共有責任モデルを採用している。それにより、インフラのセキュリティを確保し、稼働率を保証し、プラットフォーム・レベルの保護を提供している。SaaS における、このモデルでは、ベンダーが責任を負うものが、基盤のホスティング・インフラ/システムとなり、ユーザーが責任を負うのが、アプリケーションの設定/アクセス管理/データ共有の制御などになる。したがって、アプリケーションの安全な設定と使用は、顧客の責任となる。

ユーザーの責任として挙げられるものには、ID 管理/権限管理/データ共有ポリシー/サードパーティとの連携が含まれる。これらのセキュリティ・レイヤーは、オプションではなく基盤である。

この点に関する無理解は、データにも反映されている。”State of SaaS Security 2025 Report” によると、ユーザー組織の 53% が回答した内容は、SaaS セキュリティへの信頼はベンダーへの信頼に基づくというものだった。しかし、侵害を受けやすい設定をユーザーが管理している場合において、すべてはベンダーの処理によると想定することで、危険な盲点が生み出される可能性がある。

ログに記録されないものは検出できない

ほとんどのインシデントは、高度な脅威アクターによるアラートのトリガーとは無関係である。むしろ、気づかれないコンフィグやポリシーの問題が原因となっている。”State of SaaS Security 2025 Report” によると、インシデントの 41% は権限の問題であり、29% はミスコンフィグの問題である。

これらのリスクは、ユーザーの行動により引き起こされるものではないため、従来からの SaaS 脅威検出プラットフォームなどでは検出されない。なぜなら、システムの設定方法の領域における問題だからだ。したがって、ログやアラートの分析には何も現れず、ダイレクトに Configuration/Permission/Integration を分析することでのみ、これらのリスクの検知が可能になる。

典型的な SaaS 攻撃経路は、アクセス試行から始まり、データ窃取で終わる。それぞれのステップは、ポスチャ制御によるブロックや、異常やイベント・ドリブン・アラート により検出できる。

しかし、すべてのリスクがログ・ファイルに記録されるわけではない。その中には、攻撃に備えた環境の強化でのみ対処できるリスクもある。

ログに記録されるものには、ログイン/ファイル・アクセス/管理者の変更といったアクションがある。しかし、過剰な権限付与/セキュリティ保護のないサードパーティ接続/過度に露出されたデータなどは、アクションではなく条件である。したがって、脅威アクターが、それらの要素に接触しなければ、ログファイルに痕跡は残らない。

このギャップは、単なる理論上のものではない。Salesforce の OmniStudio プラットフォームにおける調査で明らかになったのは、従来の監視ツールでは検出できなかった、重大なミスコンフィグの存在である。

この問題は、極端な事例ではない。デフォルトで機密データを公開する権限モデルや、意図した以上に広範なアクセスを許可するローコード・コンポーネントなどが、そこに含まれていた。リスクは現実のものであったが、その兆候は表には出なかった。

ちなみに、このプラットフォームは、医療/金融/行政のワークフローといった、規制の厳しい業界のために設計された、ローコード/カスタマイズのサービスである。

検知という行為は、アクティブな脅威への対応において重要であるが、セキュアな体制の代替ではなく、その上に重ねて構築する必要があるものだ。

Security by Design: SaaS プログラムの構築

肝心なことは、ミスコンフィグを検知することが不可能であり、それによる回避も不可能だということだ。システムの設定方法にリスクが内在していても、検知による捕捉は不可能であるため、まずは体制の管理が必要となる。

したがって、侵害が発生した後の対処ではなく、侵害を引き起こす状況の予防に注力する必要がある。そのためのスタート地点は、コンフィグ/パーミッション/サードパーティ・アクセス/シャドー AI/攻撃者に悪用されやすい危険な組み合わせの可視化となる。

脅威の検知は、依然として重要である。ただし、その理由は、体制の脆弱さに由来するものではなく、あらゆるシステムであっても完璧ではないからである。AppOmni によるユーザーへの支援は、強力な予防体制と高精度な検知を組み合わせ、既知のリスクを阻止し、未知のリスクを捕捉する多層防御戦略の構築にある。

SaaS セキュリティへの合理的なアプローチ

最新の SaaS セキュリティ戦略の構築においては、実際に管理可能な範囲から、手を付けるべきである。たとえば、コンフィグのセキュリティ確保や、アクセス管理、可視性の確立に注力すべきである。SaaS リスクへの対応は、問題が発生する前に行うのが最善である。

SaaS 体制における、ギャップを埋める準備はできているだろうか。多くのチームが知りたいはずの、自分たちの組織に不足している部分や、先進的な組織が講じている対策については、”State of SaaS Security 2025 Report” が参考になるはずだ。

セキュリティ侵害の要因から、所有と自信のギャップにいたる領域で、セキュリティ体制の在りかたが成果に与える影響について、明快に解説している。