GDPR は消費者の信頼を低下させた：IT リーダーの 66% が回答 – Macro 4 調査

Two-Thirds of IT Leaders Say GDPR Has Reduced Consumer Trust

2023/05/22 InfoSecurity — GDPR (General Data Protection Regulation) のあり方により、それぞれの企業に対する消費者の信頼が低下したという、IT リーダーの３分の２ (66％) の捉え方を、Macro 4 の最新調査が示している。2018年5月25日に、GDPR が欧州で施行されてから５年が経過し、個人データ保護の必要性に対する意識が高まった結果が、この調査に現れている。

GDPR が透明性を示すことで、企業と顧客との間で信頼関係を築けるという希望が、現時点では実現されていないことが、この調査結果が示唆していると、Macro 4 の Director Commercial and Technical である Jim Allum は述べている。


Allum は、「GDPR への信頼という観点で言えば、現実には逆効果をもたらした可能性があることを、この調査結果は示唆している。この規制により、消費者のデータが使用される方法について、人々の疑念が高まってしまったと、大半の IT リーダーは感じているようだ。おそらく、自分のデータがどのように侵害され、誤用される可能性があるかについて、人々が適切な情報を得られるようになったためだろう」とコメントしている。

さらに彼は、「データ・プライバシーの重大な侵害を報道するメディアの見出しや、有名ブランドに科された巨額の罰金は、全体的な信頼性への疑念を煽るものだ。そして、ルールに従ったデータ管理を行っていることを、企業が証明するために、これまで以上に努力する必要があることを意味する」と述べている。

2023年5月22日に 、Facebook のオーナーである Meta は、2020年の Schrems II インシデントにおいて、EU と米国間でデータを転送したことが、GDPR のルールに反するとされた。その結果として、標準契約条項 (SCC：Standard Contractual Clauses) により、過去最高である €1.2bn ($1.3bn) の罰金を科された。

Macro 4 が IT リーダー 100人を対象に行った調査では、GDPR とデータ保護法に対する、多数の興味深い見解などが浮き彫りになっている。回答者の 86％ は、ChatGPT のような新しい AI 技術に対応するために GDPR を更新する必要があり、さもなければ不適切となっていくリスクがあると考えている。

専門家たちは、生成 AI モデルの開発に関して、データ・プライバシー上の懸念を数多く提起している。そして ChatGPT は、そのデータ・スクレイピング手法について、疑念のスポットライトを浴びている。Allum は、「データプライバシー規制当局は、AI の使用方法に関するルールやガイダンスを率先して定める必要がある」と指摘している。

また、回答者の 85% は、英国が DPDI (Data Protection and Digital Information)  法案という形で規定を改正するのではなく、GDPR のデータ・プライバシー要件に留まった方が、コンプライアンスが容易になると述べている。

喜ばしいことに、調査対象となった IT リーダーの72%は、ハイブリッド・ワークへの移行と、GDPR への準拠を両立させるために、より多くのリソースの投入が必要になると述べている。その理由は、職場外での個人情報へのアクセスが増えたことにある。

しかし、自分の組織が個人情報を保存／処理／使用する方法が、GDPR に完全に準拠していることについて、５人に１人 (18％) は、知らない、もしくは、同意していないと回答している。

さらに、半数近く (44％) が、この規制による余分な役所仕事が、デジタル・トランスフォーメーションを妨げていることに同意している。また、62％ が、データ主体のアクセス要求や、その他の GDPR クエリ処理に、多大な時間とリソースを取られていると述べている。

タイトルを読むと、まるで GDPR が悪者のように扱われていますが、個人データの使い方という意味では、この業界全体の問題だと言えるでしょう。ただし、文中で事例として挙げられている、今回の Meta への対応などを見ると、巨額の罰金から逃げられない企業だけを相手にしているようにも思えてしまいます。たとえば、クッキーの規制などは、もっと踏み込んでほしいところですが、それをやると、大手だけではなく中小零細企業も相手にする必要性が生じてしまうので、面倒なのでしょう。そして、突如として浮上してきた、生成 AI の問題があります。これは、規制する側にとって、かなり厄介な問題となりそうです。