Google の発表:Chrome サードパーティ・クッキー排除の撤回と言訳とは?

Google rolls back decision to kill third-party cookies in Chrome

2024/07/22 BleepingComputer — Google が発表したのは、Chrome のサードパーティ・クッキーを廃止する計画を撤回し、その代わりとして、これらのクッキーの使用方法をユーザーが制限できる、新たなブラウザ・エクスペリエンスを導入するという方針である。サードパーティー・クッキーとは、訪問中の Web サイト以外からユーザーの Web ブラウザに保存されるデータを指し、通常は、トラッキング・スクリプトや広告によりドロップされるものだ。これらのクッキーによって、同じサードパーティ・ドメインからのコードを利用する、他のサイトからのユーザー追跡も可能になるため、広告主はユーザーの閲覧習慣や興味を知ることができる。


これらのクッキーは、一般的にプライバシー・リスクとみなされており、2018年に施行された欧州連合の一般データ保護規則 (GDPR:General Data Protection Regulation) 法により、広告主はサードパーティのクッキーを使用する前に、ユーザーの同意を得ることが義務付けられた。

そして 2019年には、Mozilla Firefox がデフォルトでサードパーティ・クッキーのブロックを開始し、それに続いて、2020年には Apple Safari もクッキーのブロックを開始したことで、広告業界に大打撃が生じた。

それに倣うとしていた Google は、サードパーティ・クッキーの段階的な廃止を 2024年 Q1 に開始し、2025年 Q1 に終了する予定である。そして、サードパーティ・クッキーに代わるものとして、Privacy Sandbox を導入した。この Privacy Sandbox は、広告目的でユーザーの興味を追跡する、より匿名性の高い方法とされている。

しかし、広告を提供するプラットフォームや企業では、Privacy Sandbox への移行が遅れており、その多くはベータ・テスト中であるという。

この移行に多大な労力を費やしてきた Google は、サードパーティ・クッキーを段階的に廃止することはなく、パブリッシャー/広告主などのオンライン広告に関わる、あらゆる企業に影響を与えないようにすると述べている。その代わりに、サードパーティ・クッキーの使用を制限するための、新しい Google Chrome エクスペリエンスを展開する予定だという。

Google Privacy Sandbox の VP である Anthony Chavez は、7月22日に公開されたブログで、「私たちは、Privacy Sandbox の現状を踏まえて、ユーザーの選択を高める最新のアプローチを提案する。サードパーティ・クッキーを廃止する代わりに、Chrome に新しいエクスペリエンスを導入し、Web ブラウジング全体に適用される情報に基づく選択が可能になるようにする。私たちは規制当局とも、この新しい道筋について議論しており、また、業界と協力しながら展開していく」と述べている。

この “エクスペリエンス” が、どのようなものになるのかは不明である。だたし、Chrome に組み込まれたグローバルなクッキー同意システムのようなものであり、サードパーティのクッキーのオプトイン/オプトアウトが、ユーザーに提供されると予測される。

しかし、EFF (The Electronic Frontier Foundation) のようなプライバシー保護団体は、この決定に否定的であり、プライバシーよりも利益を選ぶ Google の姿勢を示していると指摘している。

EFF の技術者である Lena Cohen は、以下のようにコメントしている。

❖ Electronic Frontier Foundation Staff Technologist Lena Cohen ・・・

Google による今回の発表は、ユーザーのプライバシーよりも利益を優先するという、彼らの継続的なコミットメントを強調するものだ。Safari と Firefox は、Google が同じことを約束した 2020年以降において、デフォルトでサードパーティ・クッキーをブロックしている。

サードパーティ・クッキーは、最も普及しているトラッキング技術の一つであり、広告会社やデータブローカーが、ユーザーのオンライン活動に関する情報を収集し、販売することを可能にしている。それにより、悪質な業者間での機密情報の売買や、弱い立場の人々をターゲットにする略奪的な広告などが発生し、さまざまな弊害がもたらされる能性が生じる。

他の主要ブラウザが、何年も前からサードパーティ・クッキーをブロックしているにもかかわらず、Google がサードパーティ・クッキーを許可し続けるという決定は、広告主導のビジネスモデルの直接的な結果である。Google の収益の 80%近くがオンライン広告によるものであり、Chrome がユーザーのプライバシーよりも、広告主の利益を優先する理由は明らかである。

・・・ ❖ Electronic Frontier Foundation Staff Technologist Lena Cohen

EFF が推奨するのは、サードパーティ・クッキーなどのオンライン・トラッキングをブロックする、ブラウザ・エクステンション Privacy Badger のインストールである。なお、uBlock Origin などの広告ブロッカーを使用して、トラッカーや広告をブロックすることもできる。

BleepingComputer は Google に対して、”Google Experience” に関するコメントを求めているが、未だ返答は得られていない。