Microsoft 365 Calendar を悪用:HOLLOWGRAPH という高ステルス性のマルウェア

Hackers Are Turning Microsoft 365 Calendar Invites Into Secret Malware Command Channels

2026/07/20 CyberSecurityNews — Microsoft 365 カレンダーをハイジャックした、HOLLOWGRAPH と呼ばれるステルス性の高い新たなマルウェア株が、通常のカレンダー招待に偽装した悪意のコマンドを介して、ハッカーと秘密裏に通信している。HOLLOWGRAPH は .NET でコンパイルされたマルウェア・コンポーネントであり、侵害済みの Microsoft 365 アカウントを通じて Microsoft Graph API を悪用するものだ。それにより、メール・ボックスのカレンダーを、ハッカー向けの秘密の双方向 “デッドドロップ” へと変容させる。

このマルウェアがサポートするコマンドは、get と send の 2 つだけである。また、不審な攻撃者サーバへ接続するのではなく、信頼された Microsoft クラウド・インフラを通じてすべてをルーティングするため、トラフィックは通常の業務アクティビティに紛れ込む。

Group-IB のレポートによると、この悪意のオペレーターは命令をカレンダー・イベントとして配置する。その一方で、マルウェアは独自の暗号化イベントを作成し、添付ファイル内にデータを隠すことで、盗んだファイルを外部へと持ち出す。

メールボックス所有者に気付かれないようにするために、すべての悪意のイベントは、はるか未来の 2050年5月13日にスケジュールされる。そのため、実際の予定表には表示されない。

DNS による巧妙な認証情報更新

カレンダーの仕掛けに加えて、HOLLOWGRAPH は 2 つ目の秘密チャネルを使用する。それは、”cloudlanecdn[.]com” というドメインへの IPv6 AAAA レコード・クエリを通じた DNS トンネリングである。それにより、このマルウェアは Microsoft Entra ID (Azure AD) のログイン認証情報を密かに更新し、更新された値を、無害なログ・ファイルに見える logAzure.txt に保存する。

Graph API チャネルを通じて移動する全データは、ハイブリッド RSA および AES-256-GCM 暗号化により保護される。受信コマンドと送信される盗難データでは、別々の鍵ペアが使用されるため、2 つの方向は暗号学的に分離された状態に置かれる。

HOLLOWGRAPH は、Cavern バックドア・フレームワークに高い信頼度で帰属すると、Group-IB は指摘している。Cavern とは、Check Point Research が以前に文書化したモジュール型のコマンド&コントロール・ツールキットであり、 “Cavern Manticore” として追跡されるイラン由来のアクターに関連付けられている。

この関連付けは、両方のマルウェア・ファミリーで観測された、コマンド構文の一致とコマンドコードの共有に基づくものだ。さらに調査担当者が確認したのは、イランの Ministry of Intelligence and Security に結び付けられ、OilRig のサブグループと見なされる脅威グループ Lyceum との技術的な重複である。ただし、この関連は低い信頼度に留まっている。

このキャンペーンは大規模なものではない。Group-IB が特定した感染システムは僅か 12 台であり、観測期間中に攻撃者とアクティブに通信していたのは、そのうち約 3 台だけだった。

アクティビティは、遅くとも 2026年6月3日から追跡されており、直近の通信は 2026年7月9日に観測された。その結果として示されたのは、侵害されたメールボックス/アップロードされたマルウェアサンプル/関連する Cavern ファイルなどの指標が、イスラエルの組織に対して絞り込まれている点である。これは日和見的なハッキングではなく、意図的なスパイ活動であることを示唆している。

2050-05-13 の日付を持つカレンダーイベント/GUID だけの件名/Event ID: および Boss{..}ID{..} の命名パターンに従う件名/File{n}.txt という名前の添付ファイルを探すことで、このマルウェアのハンティングが可能である。

さらにセキュリティ・チームは、アプリケーション駆動のカレンダー変更において、Microsoft Graph アクティビティの監査/異常な AAAA DNS クエリの監視/cloudlanecdn[.]com ドメインと logAzure.txt ファイルを監視すべきである。

Group-IB がユーザー組織に対して推奨するのは、クラウド可視性の強化/信頼されたクラウド・サービス悪用の監視/OAuth アプリケーション権限と Entra ID 認証情報の制御の厳格化などにより、類似の攻撃を早期に検知することだ。