Google Chrome の新機能 App-Bound Encryption:情報窃取マルウェアをブロック

Google Chrome adds app-bound encryption to block infostealer malware

2024/07/30 BleepingComputer — Google Chrome は、情報窃取型のマルウェア攻撃に対するセキュリティ向上のため、Windows システム上でより優れたクッキー保護のための新機能 App-Bound Encryption を追加した。Chrome のソフトウェア・エンジニアである Will Harris が、7月30日に発表したブログで説明しているように、現時点における Chrome は、クッキーやパスワードなどの機密データを保護するために、各 OS が提供する最も堅牢な技術を使用している。具体的には、以下のとおりである。

  • macOS:Keychain
  • Linux:kwallet または gnome-libsecret
  • Windows:Data Protection API (DPAPI)


DPAPI によるプロテクションは、コールドブート攻撃に対して、また、Windows システム上の他のユーザーからの攻撃に対して、静止状態のデータを保護するためのものである。したがって、ログインしたユーザーとして、コードを実行するように設計された、悪意のあるツールやスクリプトからの保護は不可能である。

Harris は、「Chrome 127 では、App-Bound Encryption プリミティブを提供することで DPAPI を改良し、Windows 版に新しい保護機能導入している。ログインしているユーザーが実行する、あらゆるアプリから、この種のデータにアクセスできるわけではなくなる。つまり Chrome は、macOS でのキーチェーンの動作と同様に、アプリの ID に結びついたデータを暗号化できるようになった」と述べている。

Chrome の App-Bound Encryption は、SYSTEM 権限で実行される新しい Windows サービスを使用し、アプリが暗号化を要求する際にアプリの身元確認を行う。このサービスは、暗号化されたデータにアプリの身元をエンコードするため、対象となるアプリからの復号化だけが許可されるようになる。

Google Chrome App-Bound Encryption
Google Chrome のアプリバインド暗号化 (Google)


このサービスはシステム特権で動作するため、攻撃を試行する脅威アクターにとっては、システム特権の獲得もしくは、Chrome へのコード注入などが条件となる。さらに言えば、この種のアクションは、一般的または正当なものではないため、マルウェアによるデータ窃取などが実行されると、ウイルス対策ソフトウェアにより容易に検出される。

この改善された保護機能は、パスワード/支払いデータなどに加えて、永続的な認証トークンにまで拡大されるため、情報窃取マルウェアの攻撃に対して、機密データの保護が強化される。

また、Safe Browsing/Device Bound Session Credentials を使用した Chrome のダウンロード保護や、盗まれた Cookie の使用を警告する、アカウント・ベースの脅威検出なども追加される。これらは、最近になって Google が発表した、ユーザー・データ保護のための取り組みの一部である。

Harris は、「App-Bound Encryption は、攻撃者によるデータ窃盗のコストを増加させ、また、システム上での攻撃者の行動を検知しやすくするものだ。その一方で、防御者にとっては、システム上の他のアプリに許容する動作について、明確な線引きが可能になる」と指摘している。

彼は、「マルウェアが絶えず進化する状況を踏まえて、セキュリティ・コミュニティーの人々と協力しながら、強力なアプリ分離プリミティブなどによる検出の改善や、あらゆるバイパスに対する OS 保護について、引き続き関与していきたいと考えている」と締め括っている。

先週に Google は、パスワードで保護されたアーカイブをダウンロードする際の、新たな Chrome アラートを展開している。それにより、悪意のダウンロード・ファイルに関する、より多くの情報を取り込んだ警告が提供される。