Agent Tesla マルウェアの最新バージョン:認証情報窃取と検知回避の機能を刷新

New Agent Tesla Malware Variant Boosts Evasion Capabilities

2026/08/21 InfoSecurity — 悪名高い Agent Tesla の新バージョンに取り込まれた、認証情報の窃取と検知回避のための新機能が、KnowBe4 の調査により判明した。このサイバーセキュリティ企業は、Agent Tesla バージョン 4 の情報窃取マルウェアを詳細に分析し、財務部門を標的とする高度な Business Email Compromise (BEC) を装った誘導によって、このマルウェアが配布されたことを明らかにしており、コード本体に Unicode 絵文字を埋め込む新たな難読化手法も確認している。

最終的なペイロードが収集する 40 以上のアプリケーションの認証情報は、ファイル転送メカニズムを介して、単一の脅威アクター制御ドメインへ向けて迅速に外部流出させるように設定されている。研究者がセキュリティ・チームに対して強く推奨するのは、Agent Tesla が認証情報を収集する前に検知できるよう、メール・セキュリティ・ルールを更新することである。

新たな Agent Tesla キャンペーン

KnowBe4 の研究者たちは Agent Tesla v4 の配信試行を確認しており、メールは社内通信が転送されたように装う転送済みスレッドとして着信していた。フィリピンを拠点とする実在の商業銀行 Metropolitan Bank and Trust Company のアドレスが攻撃者によりスプーフィングされ、このメール・スレッドは受信者が途中から参加した進行中のやり取りに見えるよう設計されており、受信者には添付文書を確認して返信するよう指示されていた。

このマルウェアは JScript ドロッパーを介して動作し、最初に表示される “プログラムから開く” ダイアログを操作するだけで起動する。

スクリプトの本体には、ハートや水滴など多数の Unicode 絵文字がコード内に織り交ぜられており、これらの文字を用いた難読化によってコードがノイズ化されるため、簡単な目視確認では解析が難しくなり、文字列ベースのシグネチャ照合も妨害される。これは、配信に使用された JScript ドロッパーそのものに施された難読化手法であり、テキスト・エディタで開いた際にもコード本体に Unicode 絵文字が大量に埋め込まれていることが確認できる。

テキスト・エディタで開かれた JScript ドロッパー。コード本体に Unicode 絵文字が大量に埋め込まれている。画像出典:KnowBe4

起動後のスクリプトは、”C:\Users\Public\Libraries\” に 2 つのファイルを書き込み、そのうち 1 つは偽装用として使用され、エクステンションを介して DonutLoader シェル・コードへ渡されることで、リフレクティブ PE (Portable Executable) を実行する。この処理により、最終的な Agent Tesla バイナリはファイル・システムに一度も書き込まれないため、ファイルベースのスキャナでは検知できない。

Agent Tesla v4 には複数の防御回避機能が含まれており、その 1 つが ConfuserEx と呼ばれる難読化ツールである。ConfuserEx は意図的にコードをスクランブルすることで解析を試みる者の作業を困難にし、このマルウェアのアセンブリも、埋め込まれたメタデータ内で Python インストーラーとして偽装されている。

さらに、最初の防御手段として、標準的な Windows 関数を介してデバッガーの存在を検知し、デバッガーを検知した場合には実行を停止する機能を備えている。認証情報の収集前には固有のハードウェア・フィンガープリントを作成し、これによって攻撃者は OS の再インストール後や IP の変更後も、一貫して被害者を追跡できる。

Agent Tesla は、その他にも複数の防御回避メカニズムを展開しており、その中にはすべての外向き接続に対する検証の無効化が含まれる。これにより、セキュリティ・アラートやエラーを発生させることなく C2 インフラストラクチャとの通信を維持する。

このマルウェアは、Web ブラウザ/メッセージング・プラットフォーム/Windows ネイティブの認証情報リポジトリといったさまざまなソースから認証情報を収集するよう設計されており、さらにキーロガーやクリップボード・ツールを使用して入力内容を取得することも可能である。外部流出するファイルには、システム・フィンガープリントのヘッダーとして、タイムスタンプ/ユーザー名/コンピュータ名/オペレーティング・システム名/CPU/RAM/パブリック IP/MD5 ハードウェア ID などが含まれる。

KnowBe4 によると、認証情報の収集から外部流出までに遅延を伴うステージングは行われず、収集した情報は実行から数秒以内に攻撃者の FTP サーバに到達する。

絵文字による難読化手法への対策

8月20日に公開された KnowBe4 のブログによると、JScript ドロッパーにおける絵文字を用いた難読化は、JScript 固有のパターンと併用して Unicode コード・ポイントを検知する YARA ルールを回避できない。また、研究者たちは、絵文字の分布パターンと WScript.Shell または CreateObject の呼び出しに一致するルールにより、このマルウェアの系統を検知できると述べている。