Tencent 傘下の Tuya に圧力:中国データセキュリティ法と米大統領令の狭間で

US senators want Tencent-backed Internet of Things firm Tuya sanctioned, calling the Chinese platform a security threat

2021/09/11 SCMP — ニューヨークに上場している中国の IoT 企業である Tuya Smart を、米国人のプライバシーを損なう国家安全保障上の脅威であるとし、米国の3人の上院議員が Janet Yellen財務長官に対して制裁を求めている。

金曜日に、共和党の Marco Rubio/Rick Scott/Tom Cotton 上院議員は、米上院の Web サイトに掲載された公開書簡の中で、今月に施行された中国のデータセキュリティ法に基づき、Tuya Smart のユーザー・データは、同国政府と共有することが求められていると述べた。中国における合法的なデータ共有の要件は、米国では国家安全保障上の懸念として取り上げられてきた。

上院議員たちは、「サイバー・セキュリティと国家安全保障の専門家たちは、Tuya がユーザー・データに対する保護を欠いていることについて、すでに重大な懸念を表明している。しかし、中華人民共和国の企業である Tuya には、米国を含む国々のユーザー・データを、中国政府と共有する義務があるという、より基本的な現実もある」と述べている。

何もしないということは、北京政府に米国の個人データを提供し続けることになり、IoT の脆弱性に関する悪用を助長することになる、と上院議員たちは主張している。その一方で Tuya は、米国を含む全ての地域ごとにユーザー・データを分離しているため、上院議員の主張には「根拠がない」と述べている。Tuya は、「どこかの国の政府から、他の国のユーザー・データを共有するように、要請を受けたことはない。この件に関するあらゆる主張に対して、積極的に自己弁護する用意がある」と、土曜日に Post 紙に語っている。

上院議員たちは、バイデン米大統領が6月に発表した、中国軍と関係があると考えられる中国企業への投資を、米国人に対して禁止する大統領令を拡大し、Tuya を SDN (Specially Designated Nationals) 中国軍産複合体企業のリストに加えることを望んでいる。3人の上院議員はいずれも、中国に対して比較的タカ派的な立場をとることで知られている。かつて Rick Scott は、すべての中国国民は、政府のためのスパイ活動を要求されていると主張していた。また、Marco Rubio と Tom Cotton は、昨年の香港に関する発言などにより、北京政府から制裁を受けている。

さまざまなスマート・デバイスを接続するための、IoT クラウド・プラットフォームを運営する Tuya は、この3月にニューヨーク証券取引所で新規株式公開を行い、9US$915 million を調達した。これは、米国における今年の中国企業の IPO としては、2番目の規模である。中国杭州に本社を置く Tuya は、中国ビッグテック Tencent Holdings と、米国の VC New Enterprise Associates (NEA) の支援を受けている。NEA のパートナーであり、また、GE の元 CEO である Jeff Immelt も、Tuyaの取締役会に参加している。米国で上場している中国企業に対して、北京政府がする監視の目を強めているが、Tuya も最新のターゲットとなっている。

中国の国有通信事業者である China Telecom/China Unicom/China Mobile の3社と、海洋石油開発会社である CNOOC は、トランプ前米国大統領による 2020年11月の大統領令を受けて、米国の証券取引所から上場廃止となった。この命令は、中国軍との関係があると、米国防総省が指摘した企業に対して、米国人の投資を禁止するものだ。バイデン大統領は6月に禁止対象を 59社に拡大し、8月2日に発効したことで、これらの中国企業の株式を売却するために、1年間の猶予が与えられた。

今年に入り、中国のハイテク産業に対する、規制当局の長期にわたる取り締まりにより、香港やニューヨークの株価が急落するなど、中国株への懸念が高まっている。
特に、7月に発生した Didi Chuxing の株価下落は、世界の投資家や規制当局にとって憂慮すべき出来事となった。北京政府は、同社がニューヨークで上場した数日後に、同社に対するサイバー・セキュリティ調査を開始した。現時点における同社の株式は、ピーク時の約半分の水準で取引されており、Didi に対する株主訴訟が米国で起こされている。

先日に「中国の Didi Chuxing は政府主導の資本介入を否定するが」をポストしましたが、その続編という感じの記事です。現時点で、この類のトピックは、中国のデータセキュリティ法に起因するものであり、ナショナル・セキュリティにつながる話となります。そして、Tencent 傘下の Tuya ですが、IoT 企業であるだけに、その影響範囲も広大なものとなります。このまま行くと、Tuya だけではなく、中国政府も米国政府も、切羽詰まった状況に陥るはずなので、とても心配です。