フィンランドのロシア国境付近で GPS 干渉が異常に増加している

Finnish govt agency warns of unusual aircraft GPS interference

2022/03/11 BleepingComputer — フィンランドの Transport and Communications Agency である Traficom は、同国東部国境付近で GPS 干渉が異常に増加しているとの情報を公表した。現時点で、干渉の原因は不明だがが、同庁に提出された多様な情報源からの多数の報告書によると、この干渉は週末に始まり、現在も継続しているとのことだ。そのため、フライトの安全を守るための追加措置を講じ、パイロットには警戒を高めるよう、NOTAM (航空従事者への通知) が発行されている。特に日曜日には、フィンランドのサヴォンリンナに向かう Transaviabaltika の飛行機数機が、搭載されている GPS ナビゲーション・システムの故障により、エストニアのタリンへの帰還を余儀なくされた。

SMS notification for flight cancellation
SMS notification for flight cancellation (YLE)


Traficom の Director である Jari Pöntinen は、「飛行機は安全を維持している。航空会社には、GPS 信号が途絶えた場合の手順がある。航空機は、他のシステムを使って安全に航行し、着陸することができる。航空管制は、他の着陸システムの助けを借りて、航空機のパイロットをサポートしている」とコメントしている。

同庁が発表した結論は、挿入された信号が上空を対象としているため、地上から干渉源を特定することは困難であり、その影響は非常に瞬間的かつ局所的であるため、いかなる検証も事実上不可能であるとしている。

GPS スプーフィング

GPS (Global Positioning System) は、4基以上の衛星が受信機に対して、位置情報と時刻情報を送信するリンクに依存する、無線ナビゲーション・システムである。もし、このリンクが妨害された場合や、GPS 衛星を装った地上システムにより受信機のフォーカスが乗っ取られた場合には、ナビゲーションが信頼できなくなる。

実際の GPS 信号は微弱であり、受信機のアンテナも敏感ではないため、このスプーフィングも比較的簡単に行える。このようなスプーフィング攻撃に必要な機器は数百ドル程度で購入でき、現実的な GPS 衛星の電波をシミュレートするソフトウェアも容易に入手できる。たとえば、1KWの携帯用ジャマーは、80km も離れた GPS 受信機をブロックすることが可能であるため、この種の攻撃を仕掛ける上で、現実的な課題はそれほど多くない。

原因となり得るもの

GPS スプーフィングは、ヨット・ハイジャックなどの標的型高額攻撃で使われたことがあるが、一般的には軍隊が踏襲している戦術となる。以前から黒海では、複数の船舶の航行障害が報告されており、2017年の事件とロシアが結びつけられている。

2017年12月にノルウェー当局は、ロシアが軍事訓練中に GPS 航法を広範囲に妨害したと非難している。2018年11月には、フィンランドで行われた NATO 軍事演習でも、同様の問題が生じている。

今回は、米国のバイデン大統領とフィンランドのサウリ・ニニスト大統領の会談と、この干渉が重なっている。このとき、同国は NATO への加盟を検討しているが、それに対して、クレムリンでは強固に反対している。報道によると、この妨害はフィンランドに限らず、ポーランド/リトアニア/ラトビア、そして、広大なバルト海地域にも影響を及ぼしているという。


現時点では、フィンランド当局が、現在進行中の問題を調査中であることを表明している。その一方では、被害を受けた他国からの公式なコメントは得られていない。

このセキュリティ問題は解決できるのか?

GPS スプーフィングを止めるのは難しい。なぜなら、暗号や証明書を追加する可能性のある衛星が、低地球軌道から発する信号を変更することができないからである。地上で対処するには、受信機に GPS ファイアウォールを組み込むか、マルチアレー・アンテナを導入して信号の指向性検証係数を導入する他に策はない。

GPS スプーフィングについて調べてみたら、いま、メディアで引っ張りだこの小泉悠氏の「ロシアの GPS スプーフィング能力」という、ピッタリのドキュメントが見つかりました。そこには、「自力で宇宙優勢を達成できないならば敵の水準を引き下げてやればよいというテーゼ」や、「妨害といってもその形態は様々であるが、大きく分けてジャミング (電波妨害) とスプーフィング (なりすまし) の 2 種類を指摘することができる」といった内容が記されています。また、「ロシアによる GPS スプーフィングは、大規模な軍事的活動に付随しても報告されている」と述べ、ウクライナのドンバス地方なども含む、いくつかの例を紹介しています。→ Ukraine まとめページ

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